『愛の詩集』谷川俊太郎編(サンリオ1990/初版1981)より抜粋
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一詩人の最後の歌 H・アンデルセン
私を高く運んで行け、お前、強い死よ
魂の大きな国へ。
私は神が私に命じた道を進んだ
額をまっすぐにあげて。
私が与えたすべては、神よ、あなたのもの
どれだけ私の富があるのか、私は知りませんでした。
私が費したものはほんのわずかです
私は枝の小鳥のように歌っただけです。
さようなら、あざやかに赤い一本一本のばらよ
さようなら、お前、いとしいもの!
ただ私を運んで行け、お前、強い死よ
たとえこの世にあるのが楽しいにせよ!
ありがとう神さま、あなたが与えた下さったもののために
ありがとう、これから来るもののために!
死よ、時間の海を越えて飛んで行け
さあ、永遠の夏の方へ。
(山室静訳)
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
アンデルセンは、童話作家としてだけでなく詩人としても紹介されるが、その詩作品を目にする機会は滅多にない。
上掲は、別案件で谷川俊太郎を調べていた時に見つけた一編。
1981年版のあとがきに、『愛の詩集』は15年前に編んだ──とある。となると、谷川氏35歳当時のセレクション?
何故この詩が「愛」の言葉として括られるるのか謎だが、本人にも明確な理由は無さそうだ。
十五夜の扉は開く 赤い赤い