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echire☆echire project 俳句の記録

2024-01-01から1年間の記事一覧

偏愛図書館/2024-10

『現代短歌パスポート1/2』藤枝大編集(書肆侃侃房2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 吐く息でまつげが濡れる土曜日にわずかに犬の鳴く声がする 完璧な時代 つねった頬から蝶が湧き顔が花畑になるような 三日月が心に刺さったまま…

偏愛図書館/2024-09

『猫は髭から眠るもの』堀本裕樹編著(幻冬舎2022)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 第一回猫俳句大賞(ゲスト審査員/町田康) 新盆や見知らぬ猫のぽつり居て 梶政幸 黒猫の己が影踏む十三夜 後藤明弘 電気ストーブを猫と見つめている 菅…

偏愛図書館/2024-08

『家族』千葉皓史(ふらんす堂2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 枯菊の沈んでゆける炎かな まつくらな泉に顔をつけにけり 一列に人のはひれる夏野かな 押入れが中から閉まる青嵐 ざくさくと歩める天の高さかな 投げ入れて壺の中ま…

偏愛図書館/2024-07

『日々未来』南十二国(ふらんす堂2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 春の空言葉は歌になりたがり 暖かし耳を模様と想ふとき ロボットも博士を愛し春の草 底に手のゆらりと触るプールかな 夜桜や男の部屋に男来る 死ぬるは死に眠る…

偏愛図書館/2024-06

『よもだ俳人子規の艶』夏井いつき・奥田瑛二(朝日新聞出版2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 鶯の鳴けるやさしさ我に無し 瑛二 あじさいや雨に打たれて生き急ぐ 瑛二 色里や十歩はなれて秋の風 子規 大門や夜桜深く灯ともれり 傾…

偏愛図書館/2024-05

『句集 一人十色』梅沢富美男/夏井いつき監修(ヨシモトブックス2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 廃村のポストに小鳥来て夜明け 水やりはシジミ蝶起こさぬやうに 爪革の紅のさくさく霜柱 読み終へて痣の醒めゆくごと朝焼 花蘂降…

偏愛図書館/2024-04

『うれしい近況』岡野大嗣(太田出版2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * めのまえにあなたの口はひとつなのに頭のまんなかで声がする 空気いる?自転車置き場に猫がいてタイヤがふくらむまで見てくれる 春といえば鳴らしていない自…

偏愛図書館/2024-03

『ヒューマン・ライツ』北山あさひ(左右社2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * ぎんなんの翡翠の玉はみっしりと 約束に似た復讐もある 何を話し何に怒るの現世になみだぶくろのラメこぼれゆき オレンジと胡桃、涙とピスタチオ、薔薇…

偏愛図書館/2024-02

『玉響 正木ゆう子句集』正木ゆう子(春秋社2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * ゆれてゐる気がするゆれてゐる朧 しんかんと真昼や蚊帳の片外し ひとひらの炎をふたひらに秋彼岸 島山の一塊の蟬しぐれ 三千羽ひと声もなく鷹渡る は…

偏愛図書館/2024-01

『荻窪メリーゴーランド』木下龍也・鈴木晴香(太田出版2023)より抜粋 * * * * * * * * * * * * * * * 君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い (ひらくたび) ふたりふざけて切り合った髪の先端から火の匂い 私だけ結末を知っ…