『週末のアルペジオ』三角みづ紀(春陽堂書店2023)より抜粋
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創造のはじまり
うけとめる花弁
こんなにも小さな舟
乗りこんだら
挨拶を交わす
家々の灯りが
そこはかとなく
しかし確実に
揺れつづけて
もはや
ふたりではなく
ひとり
ぼくは きみが
結びあわせたものを
引き離してはいけない。
手をつないで
つぎの地に向かう
やみくもに先を見て
ようやく
地平線が瞬きをしたころ
ぼくたちの腕が櫂になる
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
『Web新小説』2020年5月〜2022年4月に発表された作品の書籍化。後半に谷川俊太郎氏との対談が収録されている。コロナによる緊急事態が「詩」の創作にどんな影響を与えたのか、貴重な記録の一つとなった。
私がお気に入りに選んだのは、最後から二番目に掲載された昨年四月の作品。白昼夢のような淡い世界が広がり、最後に微かな希望が生まれる。奏でる様に言葉が繋がっていくこの緩さが心地よい。
「言葉」によって対立したり傷付けあったりするWeb上の現実を、一瞬忘れさせてくれる。詩を書いたり読んだりする意味は、そういう些細なことで良いのだと思う。
若くなく新しくもなく桃を剥く