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echire☆echire project 俳句の記録

2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

花薄

『白秋詩抄』北原白秋(岩波文庫1933)より抜粋 風 一 遠きもの まづ揺れて、 つぎつぎに、 日に揺れて、 揺れ来るもの、 風なりと思ふ間もなし、 我いよよ揺られはじめぬ。 ニ 風吹けば風吹くがまま、 我はただ揺られ揺られつ。 揺られつつ、その風をまた、 …

曼珠沙華

『文豪と俳句』〈川上弘美〉の章──小説をヒントに読み解く俳句の謎 岸本尚毅(集英社新書2021)より抜粋 人魚恋し夜の雷(いかずち)聞きをれば 目ひらきて人形しづむ春の湖 十六夜や川底の人浮かびくる あめみたよなこゑのをんなだつたよな 春の夜人体模型歩き…

黒葡萄

『石垣りん詩集』伊藤比呂美編(岩波文庫2015)より抜粋 唱歌 みえない、朝と夜がこんなに早く入れ替わるのに。 みえない、父と母が死んでみせてくれたのに。 みえない、 私にはそこの所がみえない。 (くりかえし) ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•…

火焔茸

『左川ちか全集』島田龍編(書肆侃侃房2022)より抜粋② 眠つてゐる 髪の毛をほぐすところの風が茂みの中を駈け降りる時焔となる。 彼女は不似合な金の環をもつてくる。 まはしながらまはしながら空中に放擲する。 凡ての物質的な障碍、人は植物らがさうである…