echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

⑦夏【2019/Que sais-je?】

短夜の溜息、罠、縦に流れる 薄暑光サプリメントを撒き散らす 例えば蚕豆この色はこの形 招く手の長さ怖ろし花菖蒲 てのひらに目高世界が覗き込む 水草の花ゆうるりと神隠し にんげんに化けて気散じ夏の川 有るはずのたてがみ宙に振り大暑 青蜥蜴石段どこへ…

⑥夏【2018/薹上に餓ゑて月】

荒梅雨に人、人でなきもの渡る 白南風や顔認証で開く本 地図にない向日葵畑風が立つ 茅の輪くぐり影は主人を連れ帰り 驟雨来る軒先朽ちて屋敷神 繊月がノノと答える洗い髪 離岸流幾たび生まれ夏の闇 檜扇の影心もち身を傾げ 今一度顔確かめる花火かな 日覆の…

⑤夏【2015ー2017】

ここで死ぬことにした蝉 子が拾う 交差点縫い止められる影の濃さ 一日の終わり夕焼け窓四角 また一つ花火が上がる指先に すれ違う人なく逮夜蜜柑花 世界から雨が集まる夜のシネマ 鞄から蝶飛びたてば夏の中 黒南風やトランクで鳴るタンバリン 少年は獣の一部…

花に来て

『銀河一族』小佐野彈(短歌研究社2021)より抜粋 どの嘘もやさしい声で語られてゆけばほころぶさくらのやうに ふくよかな頬にみやびをくすませて老いと気づかぬまま老いてゆく 冷笑があまねく街にひろがつて無声映画のやうな夕方 第一歌集『メタリック』から…