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echire☆echire project 俳句の記録

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

冴返る

『新世紀女流俳句ワンダーランド』片山由美子・伊丹啓子編(沖積舎1999)より抜粋 * * * * * * * 鬘かざして 水野真由美 あやとりの川を渡るや青薄 真昼野や仏の数が合わぬなり 身を巡る淡き水音九月果つ 星の降る廃車に幼なき者ら棲む 童僧の読経の声…

春の泥

『有夫恋』時実新子(朝日新聞社1987)より抜粋 * * * * * * * かたまりが火の色となり喉にあり 力の限り男を屠る鐘を打つ 女ふたり春のみかんに骨がある 夜の窓拭いて見えないものを見る 円周を歩く悪魔の指示通り 花ゆさりゆさりあなたを殺そうか 青…

春兆す

『貨物船句集』辻征夫(書肆山田2001)より抜粋 * * * * * * * こうべたれ月みぬひとの影法師 つという雨ゆという雨ぽつりぽつり 蟷螂の肩肘張って通りけり 凩や茶碗に浮かぶ魚の鰭 石段の魚くささよ蜻蛉とぶ 杖ついて蟷螂ゆるりと振り向きぬ 春は春路…

立春大吉

『石橋秀野の100句を読む』山本安見子(飯塚書店2010)より抜粋 * * * * * * * * 木犀にとほき潮のみちにけり 望遠鏡かなし枯枝頬にふるゝ 風花やかなしびふるき山の形 夜を寒み髪のほつれの影となる 小夜時雨枢おとして格子うち 西日照りいのち無惨に…