echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

薄ら陽の渡るさざ波山帽子

ご近所のマンションの前庭に山帽子が植えられている。今日はフレディみたいなお兄さんが咥え煙草でバイクの洗車をしながら、満開の白い花をみあげていた。

 

最近の新築マンションはシンプルな建物が多いが、アプローチ部分の植栽はデザイナーの力量がはっきり解って面白い。

手入れが難しいだろうに、珍しい特徴のあるシンボルツリーが選ばれる傾向。そしてその足元に寄植される葉物は、複雑に組み合わせられ、季節ごと見る度ごとに印象が変わる。

 

《都市空間のランドスケープデザインを考える時、遠くから建物全体を見た時のデザインと、人が前に立った時の目線に当たる高さのデザイン、大きく二つにわけて進める必要がある。》

 

これは私が昔々に卒業論文で選んだテーマだ。(正確には卒業製作のレジュメ。規定枚数の図面を提出することで論文は免除された。)

当たり前の事を書いているだけなのだが、この程度でもプレゼンの旨さだけで優秀賞を貰えた。論文雑誌にも掲載されたので夢ではないはず笑。

 

梅田〜本町あたりを歩くと時折このテーマを思い出す。まず自分の見えている世界。そこからドローンでグワワンと上昇して街全体を見ると…まったく違う世界が広がっているのだ。

 

人がデザインできる可能性

デザインが人に与える可能性

 

山帽子の花を見上げながら

綺麗ですねと

話しかけることのできる幸せ

 

 

 

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したたるるしたたるる顔したたるる底ひよりモノクロオムの笑み 高原英理

 

撫で斬りの刃先残心初鰹

会社から在宅勤務中の社員全員に、外線電話を受けるためのスマホが支給されることになった。最終的には出勤者ゼロを目指す方針らしい。

 

セールスサポートの女の子達には大不評で、家で一日中電話とるなんて無理!今まで通りの電話当番制を続けて欲しいと社長、駄目なら会長に直訴すると息巻いていたが…豪邸に住む社長や会長に、何が問題なのか伝わるとは思えない…賃貸マンションの壁は薄いのよね。解る。

 

案の定、着々と準備は進む。先週末、中古のiPhone SE2なので使い勝手が悪いかもしれませんが、と説明しながら配っていた。(悪かったな、私のiPhoneはSE2だわ。)

 

こんなに苦労してテレワークに協力しているのだ。(いやごめん、私は出勤組だけど。)さっさとオリンピックを終わらせて、元の生活に戻らせて欲しい。あれやこれやが笑い話になる日を信じよう。些細な出来事も明日の為に記録しておこう。

 

 

 

洞穴やかはほり白き物かたり 泉鏡花

塀高く何処までとどく黒日傘

エシレバターのエシレ(echire)をハンドルネームに使っているが、エシレバターが格段好きと言うわけではない。梅阪の地下に売場ができるまで実際に目にする事は無かった幻の存在、高級食材エシレバター。

 

何故この言葉を選んだのか言うと「穂村弘」である。

 

何気なく読んでいた彼のエッセイの中に、すれ違い際女の人が「エシレ」と呟いたという話があった。その時に彼が下げていた手提げ袋の文字を、咄嗟に口にしただけのことで、もしかしたら無意識だったのかも…てな感じで、穂村氏らしい軽妙な小話だった。

 

…と、ここまで書いて本当にこんな話だったっけ?と不安になって本棚を漁る。結構何冊もあるんだわ穂村弘…2冊目でヒット!「蚊がいる」の中に確かに収録されていた。心の中身が勝手に口から出てしまう感じについての考察で、展開もオチも秀逸。やっぱり面白い!

 

疲れ切って、いっぱいいっぱいになって、言葉が溢れてくる。最初に俳句を作っていた時の私はまさにそんな状況だった。「エシレ」と呟いた女性は私に違いない。エシレは私、私はエシレ…と繋がった次第である。

 

 

 

自分で文章を書くようになってからは、穂村氏のエッセイも読み方が変わってきた。何処までが事実で、何処からが創作なのか気になってしまう。エシレバターの紙袋を下げた穂村弘はいたのかいなかったのか…全てが想像としたら恐ろし過ぎるが、彼ならあり得る気もする…怖い怖い。

 

 

 

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絹よりうすくみどりごねむりみどりごのかたへに暗き窓あきてをり

葛原妙子

当代も捨て猫となり額の花

白い丸襟のブラウスに海老茶のプリーツスカートを着せてもらい、お姉さんになった気分で、朝から私は上機嫌だった。これまた他所行きの半ズボンを履いた弟を従えて、二人で家中を走り回っていた。

 

座敷の襖は外され、チョウダ(納戸/寝所)の和箪笥も大人数人掛かりで運び出された。本間の八畳、六畳、四畳半が二間、増築した洋間も合わせると悠に三十畳を超える大広間が、するすると魔法の様に出現した。

仏壇の前を少し開け、等間隔に座布団を並べていく。弟と二人、身体より大きな座布団を抱えてお手伝いをしようと張り切るが、途中から全部の座布団に座る競争に変わってしまった。終いに父親から「こりゃ!つばえたらいかん」と怒られ、二階に追いやられた。

 

これが私の一番古い記憶である。祖父のお葬式の時なので、私は四歳、弟は二歳、姉はもう小学校に上がっており、この記憶の中には出てこない。

 

不可解なのが、座布団を跳んだ記憶のある一方で、跳び廻っている自分を眺めている視点もあるのだ。ショートカットでたすき掛けのスカート姿の私が、こっちを向いてにんまりと満面の笑みを浮かべている。何度も思い出す過程で、場面ごと映像化されて、記憶が上書きされたのだろうか?どこまで信じて良いのか…脳の仕組みは本当に不思議、謎だらけである。

 

 

 

柚の花やゆかしき母屋の乾隅 蕪村

 

(総務から一段違う欄に印鑑押してますよと怒られ、その記憶がまったく無いことにショックを受けた今週の私…記憶とはなんぞやと言う話だよ)

夏草や切株巨き影重ね

小学校の教科書に、緑の美しい五月に生まれたので「みどり」と言う名前になりましたと言う話があった(気がする…うろ覚え)。そしてお決まりの、名前の由来についての作文が宿題となった。

 

当時は自分の名前があまり好きではなかったので、どうにも筆が進まず苦戦した記憶がある。両親にリサーチした結果は、有名な名付け寺で候補を幾つか貰い、そこから皆で多数決で選んだの〜との事。経典の中にある漢字を組み合わせたありがたい名前らしいが、そんな由来は子供に解る筈もなく、そのまま正直に書くしかない。夢も希望もあるかいな…無味乾燥の報告書の様な文章になってしまった。

 

全世界のみどりちゃんが羨ましくて仕方なかったよね…

 

実の所、両親から本名で呼ばれることは殆ど無く、まったく別の愛称で「ようこ」と呼ばれていた。普通に呼びやすいし女の子らしい音節、本名よりも私の性格に近しいイメージではあるが…本当に親が付けたかったのはどっちの名前だろう?今となっては知る術が無い。

 

私には家族しか知らないもう一つの名があります、と書けば面白い展開になるよ、とあの時の悩める私に教えてあげたい。毎年五月になると思い出す、どうでもいい様な話である。

 

 

 

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花うばらふたたび堰にめぐり合ふ 芝不器男

爪立ちて眼は一点を蟻地獄

YouTubeで古いドラマを観ながら眠りにつく=寝落ちするのが習慣なのだが、最近嵌まっているのが吹替版のシャーロックホームズである。ホームズを露口茂、ワトソンを長門裕之が演じている。やや一本調子の露口ホームズのしゃべり方が、眠気を誘って心地良い。程良く長いシリーズなので、まだ当分の間楽しめそうだ。

 

普段は声優の名前など気にしたことがない。

アニメオタクの友達に、この人有名な声優さんなのに知らないの?と言われても、知らんがな!と冷たくにべもなく返している。CV.とあるのはキャラクターボイスの事だと教えられたが、毎回あれ?なんだっけ?と思い出すのに手間取る位、悪いが全く興味がない。

からしたら声優だろうが俳優だろうがアイドルだろうが、一定のレベルに達してたら誰がやってもええやんと思うのだが…オタク界隈ではその越境が許せないものらしく、うっかり口に出すと話が長くなるので要注意である。

 

声の仕事と言えば、先日聴いた満島ひかりさんの詩の朗読がなかなか良かった。詩を朗読することの是非はとりあえず横に置いといて、「言葉に体重を乗せる」という役者ならではの感覚は、なるほど凄いものだと思う。ちょっと真似してみたりしてね。

 

 

 

 

【聴き逃し】ビューティフルレディオ | ビューティフルレディオ「満島ひかりNHKラジオ らじる★らじる

http://nhk.jp/radio/?p=6936_01_3350508

鳥交る背には暗黒夥し

 

 

 

静かな街に朝が来る

 

 

 

小鳥達は何をお話しているの

言葉が通じない私にも

さっきから優しく語りかけてくれている

 

お返事しましょうかね

 

気の利いた言葉を探しているうちに

話題が次々と変わってしまうので

目を瞑ったまま

時折頷いてやることにする

 

女王様の謁見

 

 

 

挨拶を終えた小鳥達は

どこぞへ出勤するのか

連れ立って行ってしまった

 

エンジン音が遠くに聞こえ

公園からボールを蹴る音が響き始める

朝寝坊なカラスが

野太い声で悪党仲間を呼んでいる

 

 

 

遂に女王様が目を開く時刻

 

テレビニュースは感染者数を繰り返しているが

鳥語を解さぬ者どもに

この世の掟は伝わらぬ

 

全ての小鳥が墜ちてくる

花やかな幻を見据えたまま

女王は一人静かに微笑んでいた

 

ほらそこの小鳥を踏まぬよう

貴方もお気をつけあそばせ

 

街はゆっくりと背を伸ばす

全ては蒼天の下にある

 

 

 

 

 

for your reference

幻を見る人 田村隆一

http://web1.kcn.jp/tkia/trp/001.html