『百人一首バトル』栗木京子/穂村弘/佐藤弓生/千葉聡/石川美南 編(書肆侃侃房2026)より抜粋
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栗木京子 選「意味としらべのマリアージュ」
わが前の空間に黒きものきたり鳩となりつつ風に浮べり 高安国世『街上』
さくらばな陽に泡立つを見守りゐるこの冥き遊星に人と生れて 山中智恵子『みずかありなむ』
好きだった世界をみんな連れてゆくあなたのカヌー燃えるみずうみ 東直子『青卵』
ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす 笹井宏之『ひとさらい』
舌だしてわらう子供を夕暮れに追いつかれないように隠した 山崎聡子『青い舌』
穂村弘 選「アバンギャルドの夢」
まことかの鸚鵡のごとく息かすかに
看護婦たちはねむりけるかな。 宮沢賢治『新校本宮沢賢治全集』
そこだけが黄昏れていて一本の指が歩いてゆくではないか 山崎方代『右左口』
繰返すよび名は風に埋れてをさないわれは十の影もつ 船津碇次郎『高踏集』
帆船は若く眩しく流れゆき我は水夫の顔を忘れき 中井英夫『暗い海辺のイカルスたち』
夕闇にまぎれて村に近づけば盗賊のごとくわれは華やぐ 前登志夫『子午線の繭』
佐藤弓生 選「遠い年、遠い地図」
人間の言葉わからぬ日のありて秋グミの実は籠に透きたる 冬野虹『かしすまりあ』
ゆうらりとわれをまねける山百合の夜半の花粉に貌塗りつぶす 前登志夫『青童子』
暗がりに柱時計の音を聴く月出るまへの七つのしづく 河野裕子『はやりを』
世界樹の繁りゆく見ゆ さんさんと太陽風吹く死後の地球に 井辻朱美『水族』
穂波 このさきに心臓ひとつもなしと聴診器を胸から掴み去る 高柳蕗子『潮汐性母斑通信』
千葉聡 選「失われた名歌を求めて」
岡に来て両腕に白い帆を張れば風はさかんな海賊のうた 佐藤史『魚歌』
桜散る川沿いにひと群れながら私たちみな川の見る夢 小島なお『展開図』
終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて 穂村弘『シンジケート』
月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい 井上法子『永遠でないほうの犬』
たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか 河野裕子『森のやうに獣のやうに』
石川美南 選「加速する時間/膨らむ時間」
次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く 奥村晃作『三齢幼虫』
肉声をはるかに聴きてくだりゆく霧の運河にひたる石階 春日井建『未青年』
殺してもしづかに堪ふる石たちの中へ中へと赤蜻蛉 ゆけ 水原紫苑『びあんか』
死者なべて身代はりなれば夕かげを羽織れるながき列に加はる 川野芽生『星の篏め殺し』
重苦しき絵
から放たれ
はなやかに
日傘ひらく
われもわれらも 岡井隆『伊太利亜』
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
好きな歌人が選ばれているとオッとなり、でもなんでこの歌なの〜?となり、並べてみると五人の好みがよくわかる大変面白い企画でした。又違う選者でもやって欲しい!






