2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧
月冴ゆるあやかし四方に伸びる影 伝奇本うつ伏せのまま読む冬日 見覚えのある人といて冬紅葉 鯉の口ぼやんと吐きし小春かな 山茶花の谿間音なく前をゆく 冬椿写す少年は少年と 凩や白い柱の建つ宇宙 堰堤で終わる足跡水涸るる 空色の背表紙並べ春隣 虹を吐く…
冬立つと黒猫小さな脚揃え 冬の靄ビルに群がる言葉達 網膜の中のむらさき冬の朝 膜状の翅切り落とし小春かな 小春日和無数に分かれゆくコロニー 木の葉散る叫びのためにある世界 鳰いまつくる波つくる波 顔見世の列に鰭ふる異形あり 白障子わななく触手昼深…
冬の海黒手袋の指し示す ポインセチア赤で真っ赤で真剣で holly night はぐれて薔薇の芽は赤い 山茶花の花踏んでおり担送車 風花よ後部座席は暗いまま 出発の荷物にもたれ寒の月 大寒や水底の草死にきれず 飽きもせず虎造唸る冬座敷 蝋梅や全く冷えてしまい…
『近現代詩歌』短歌/穂村弘選(河出書房新社2016)より抜粋 宮沢賢治(宮沢賢治全集/筑摩書房1996) まことかの鸚鵡のごとく息かすかに 看護婦たちはねむりけるかな。 いざよひの 月はつめたきくだものの 匂をはなちあらはれにけり。 雲はいまネオ夏型にひかりし…