echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

紫陽花

『詩人のノート』田村隆一(朝日選書1986)より抜粋 etching 食刻法、腐食銅版術後、エッチング《蠟引きの銅版に針で絵などかき、酸で腐食して原版を作る》エッチングによる版画。 「腐刻画」という言葉、そしてその文字に出会った瞬間、ぼくの内部に渦動して…

夏の蝶

『定本 夢野久作全集8』夢野久作(国書刊行会2022)より抜粋 * * * * * * * * * * 〔猟奇歌〕 この夫人をくびり殺して 捕はれてみたし と思ふ応接間かな 抱きしめる その瞬間にいつも思ふ あの泥沼の底の白骨 水の底で 胎児は生きて動いてゐる 母体…

走り梅雨

『パラレルワールドのようなもの』文月悠光(思潮社2022)より抜粋 * * * * * * * * * * 誕生 (前略) たましいが永遠に壊れないならば、 肉体とは抜け殻に過ぎないのか。 死とは、光と影が反転するだけのこと。 地の影に触れるように生まれた手足が …

立夏

『新撰 小倉百人一首』塚本邦雄(講談社文芸文庫2016)より抜粋 * * * * * * * * * * ☆式子内親王 かへりこぬ昔を今とおもひ寢の夢の枕に匂ふたちばな →「おもひ寢」なる簡潔な言葉の第三句が、一首の夢と現を繋ぎ、柑橘の爽やかにゆかしい香を呼び…

鐘朧

『くちびるにウエハース』なかはられいこ(左右社2022)より抜粋 * * * * * * * * * 完璧な春になるまであとひとり 過呼吸の、か、か、過呼吸の、鳥/霧/光 ほしいほしいナイフに映るものぜんぶ (せり、なずな)だれか呼ぶ声(ほとけのざ) 目覚め…