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echire☆echire project 俳句の記録

春兆す

『貨物船句集』辻征夫(書肆山田2001)より抜粋

 

こうべたれ月みぬひとの影法師

 

つという雨ゆという雨ぽつりぽつり

 

蟷螂の肩肘張って通りけり

 

凩や茶碗に浮かぶ魚の鰭

 

石段の魚くささよ蜻蛉とぶ

 

杖ついて蟷螂ゆるりと振り向きぬ

 

春は春路上のわれのらんるかな

 

《蝶来タレリ!》韃靼ノ兵ドヨメキヌ

 

夜店ひとつかぶさる闇の厚さかな

 

満月や大人になってもついてくる

 

 

 

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「貨物船」は詩人、辻征夫の俳号。「俳諧辻詩集」に鏤められた句のすべてが、前半に収められている。解説の小沢信男氏曰く、「一行で一篇の詩であり、同時に俳句」なのである。

 

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私も「俳諧echire詩集」を目指し、俳句と詩を融合した型に何度か挑戦しているが、どうしても俳句が埋没してしまい、又は分離してしまい、全体の完成度が落ちてしまう。

 

俳句を詠む時は、言葉を探す為に深く掘り下げ、一方向へ潜っていくイメージなのだが、詩を書く時は言葉を積み重ねて拡げていく感覚になる。その過程には時間の経過があり、進むに連れて思考の階層も重なっていく。多重的多角的に構成する所は散文(小説)と変わりない。

 

この違いを正確に伝えるのは難しい。あれこれ考え過ぎず、詩も俳句も楽しむ為のものであり、微笑を誘うものが良い詩、良い俳句なのだと思うことにしよう。

 

 

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緑青の鏡は楕円春兆す