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echire☆echire project 俳句の記録

2022-12-01から1ヶ月間の記事一覧

聖夜

『正岡子規──五つの入口』大岡信(岩波書店1995)より抜粋 * * * * * 鳴神の鳴らす八鼓ことごとく敲きやぶりて雨晴れにけり 鳴神の遠音かしこみ戸を閉ぢて蟻の都は雨づつみせり 瓶にさす藤の花ぶさみじかければたたみの上にとどかざりけり 藤なみの花をし…

寒の薔薇

『挑発する俳句 癒す俳句』川名大(筑摩書房2010)より抜粋 * * * * * ランプ 富澤赤黄男 ─潤子よお父さんは小さい支那のランプを拾つたよ─ 落日に支那のランプのホヤを拭く やがてランプに戦場のふかい闇がくるぞ 灯はちさし生きてゐるわが影はふとし 靴…

実南天

『山頭火百二十句・道の空』村上護(春陽堂書店1992)より抜粋 どうしようもないわたしが歩いてるゐる 雪へ雪ふるしづけさにをる 生死(しょうじ)の中の雪ふりしきる 何を求める風の中ゆく 砂に足あとのどこまでつづく ゆく春の夜のどこかで時計鳴る 水に影ある…

(16)冬【2020/やがて地獄へ下るとき】

物言わぬ人の口紅冬の霧 寒月や真っ直ぐになる今になる 底冷えのターミナル覚めて見る、夢 ニベア缶冷たし青し朝の卓 藪柑子下がって揺れた小鳥分 穴を掘る遊びをしよう細雪 阪神忌樒の山へ分け入らむ 断崖、瀑布、寒禽やがて見喪う 寒鮒や紅き腑をもつ身の…