echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

無花果の果肉ついばみ狂う哉

『水界園丁』 生駒大祐(港の人2019)より抜粋

 

 

 

枯蓮を手に誰か来る水世界

 

あぢさゐの朽葉裏より錦鯉

 

六月に生まれて鈴をよく拾ふ

 

水中に轍ありけりいなびかり

 

ゆと揺れて鹿歩み出るゆふまぐれ

 

 

 

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装丁の美しさでも話題になった句集である。勿論、中身も粒揃いで美しい。息を止め深く潜り、一つ一つ手にとっては裏返し、丁寧に探りながら読んでゆく。

 

所謂上手い俳句とは微かに異なる。この違和感は何だろう?と考えてみたが、私ごときでは分析不可能…知識があればもっと深掘りして楽しめるのだが…まぁ仕方がない。

 

違和感の一つに、一句一句がきちっと終わる感覚が強いことがある。そんな句が幾つか並ぶとバシッ、バシッ、と増幅されて響く。完結している(答えが出ている)という意味では、川柳に近い作風なのかも知れない。

 

もう一つの違和感は、所々で難解なフレーズ、意味のズレが出てくることだ。オルガン調と言ってしまえばそれまでだが、どうしても映像が浮かばず、手の中で霧散してしまう。

 

曖昧さを回避しつつ詩的であること、が俳句には求められるが、『詩に意味を問うてはならぬ』という言葉もある。

 

違和感はそのままに…

拙い書評はここで終わりにしたいと思う。