echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

偏愛図書館/2024-01

荻窪メリーゴーランド』木下龍也・鈴木晴香(太田出版2023)より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い

 

(ひらくたび) ふたりふざけて切り合った髪の先端から火の匂い

 

私だけ結末を知っている本のどこまで話してしまえばいいの

 

一年の夜空すべてを見届けて〈永遠〉で終わらせるしりとり

 

終わろうとしている夜を引き止めるための涙がこの世に落ちた

 

こぼれたら転がる果物が好きで真冬しずかにうつ伏せになる

 

消えないで赤く灯っているままの皆既月食、ちがう、両目だ

 

恋愛は羽で数えよ井の頭公園に百羽のスワンたち

 

上巻と下巻のあいだにもうひとつあるような気がしている海辺

 

走馬灯みたいなメリーゴーランド止まるのではなく消えてゆくだけ

 

 

 

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webマガジン『OHTABOOKSSTAND】での連載を書籍化。

どの歌もオシャレでカッコいいのだが、今回は鈴木晴香さんの担当パートより選んでみた。

 

短歌ならではの余韻の残り方が美しく、初期の穂村弘作品を思い起こす。

 

連作として読むと、インディーズ映画のようなシナリオ、カット割、幻想と現実を行き来する複雑なプロット構成など、物語に奥行きが出てくる。ただ反面、綺麗事として消費される短歌ならではの宿命の様なものも感じる。

 

 

 

 

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