echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

偏愛図書館/2024-04

『うれしい近況』岡野大嗣(太田出版2023)より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めのまえにあなたの口はひとつなのに頭のまんなかで声がする

 

空気いる?自転車置き場に猫がいてタイヤがふくらむまで見てくれる

 

春といえば鳴らしていない自転車のベルがほのかに鳴ってくる道

 

花と花に眠る犬の絵 ふんだんな余白が棺だと思わせる

 

レイトショー帰りのホーム 伝説になるくらいならさらばえたいね

 

切に 歩道橋からビデオ通話して映画みたいな夜 祈ってる

 

漫画なら見開きの夜 網戸から吹き出しで来るベランダの声

 

裾がいい服を着ていく今日たぶん俯きがちなわたしのために

 

後半にかけてかなしくなる予感 ポップコーンの底をまさぐる

 

銭湯の〈ゆ〉がまふたつに割れていくからだを置いてさめていく夢

 

 

 

 

ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ

 

岡野大嗣さんの第4歌集、相変わらずのオシャレさん、読ませる工夫が素晴らしい。

 

こういう作風だと無限に書けると思わせてくれるが、実際真似をしてみると直ぐに行き詰まる。言葉の賞味期限を意識し始める。

 

f:id:echireeeee:20240316135523j:image