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echire☆echire project 俳句の記録

春の泥

『有夫恋』時実新子(朝日新聞社1987)より抜粋

 

 

かたまりが火の色となり喉にあり

力の限り男を屠る鐘を打つ

女ふたり春のみかんに骨がある

 

夜の窓拭いて見えないものを見る

円周を歩く悪魔の指示通り

 

花ゆさりゆさりあなたを殺そうか

 

青いみかん人語を解すおそろしさ

顔洗う顔が小さくなっている

何を流そうかと橋の上にいる

あいつを塗りつぶす黒かな黄色かな

 

それも百体 人形が目をひらく

わたくしも電車も人を吐きつづけ

 

狂えねば五月の花を食いつくす

愛咬やはるかはるかにさくら散る

れんげ菜の花この世の旅もあとすこし

 

 

 

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時実新子さんの川柳選句集。田辺聖子さんの解説も秀逸。ここでは不思議な句、発想の面白い句を選んでみた。新子さんの代表句はもう少し生々しく、昭和歌謡寄りのものが多い。

 

この句集の1ページ4句組みのレイアウトがお洒落で気に入っている。よくよく見れば装丁・レイアウトは菊地信義さん!

 

35年前バブル期の余裕が漂う、なんとも羨ましい句集である。

 

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トラテープに倣いて進む春の泥