echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

(16)冬【2020/やがて地獄へ下るとき】

 

 

 

物言わぬ人の口紅冬の霧

寒月や真っ直ぐになる今になる

 

底冷えのターミナル覚めて見る、夢

 

ニベア缶冷たし青し朝の卓

藪柑子下がって揺れた小鳥分

穴を掘る遊びをしよう細雪

 

阪神忌樒の山へ分け入らむ

 

断崖、瀑布、寒禽やがて見喪う

寒鮒や紅き腑をもつ身の内に

 

ふるさとの言葉エンドロールの雪

 

 

 

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 閉じた海 (吉野弘)

 

ラスカー・シューラーは

こう歌った。

「私の眼のうしろに海がある

それをみんな私は泣いてしまわなければ

ならない」と。

 

私は訪ねる。

くらしの合い間は小出しに泣いて

「死」が訪れたとき 一挙に

海を泣きつくすのでしょうか 人は

海が干潟になるまで?

 

海が答える。

いいえ 海を泣きつくすまで

死に待ってもらう特権は 誰にもなくて

海は やはり

死者の眼のうしろに残る筈。