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echire☆echire project 俳句の記録

漱石忌

『いま二センチ』永田紅(砂子屋書房2023)より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

眩しさに耳塞がれているような昼下がりひ、ふ、み、蝶がゆく

 

重心を分かちてのちも水紋が交わるようにひびきあいたり

 

脱皮して洗濯バサミにみずからの影干すような平面の昼

 

カナヘビが腹あたためる静けさに重心深くこの町に住む

 

草原にくさはらと打つルビのようにあなたの傍をやわらかくする

 

 

 

 

 

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永田紅さんの第五歌集。両親共に高名な歌人であり短歌が家業という出自、ご本人も華々しい経歴──の割には、簡素で素直な歌が並ぶ。

 

一見するとほぼ子育て日記なのだが、どの程度が創作なのだろう。拘りが無いようで、実は綿密に計算されているのかも知れない。ドキュメンタリー(風)は時に嘘を付く。

 

 

 

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月差さば木は這い出でて漱石忌

 

半鐘とならんで高き冬木哉 漱石