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眩しさに耳塞がれているような昼下がりひ、ふ、み、蝶がゆく
重心を分かちてのちも水紋が交わるようにひびきあいたり
脱皮して洗濯バサミにみずからの影干すような平面の昼
カナヘビが腹あたためる静けさに重心深くこの町に住む
草原にくさはらと打つルビのようにあなたの傍をやわらかくする
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
永田紅さんの第五歌集。両親共に高名な歌人であり短歌が家業という出自、ご本人も華々しい経歴──の割には、簡素で素直な歌が並ぶ。
一見するとほぼ子育て日記なのだが、どの程度が創作なのだろう。拘りが無いようで、実は綿密に計算されているのかも知れない。ドキュメンタリー(風)は時に嘘を付く。
月差さば木は這い出でて漱石忌
半鐘とならんで高き冬木哉 漱石