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紫のきはまるところ藤ならむ欲望の房ながく垂れ嘔吐を誘ふ
雨の日は死にたくなきに紫の賜物の傘ささば煉獄
狼が犬となるまでひさかたの銀河にくらき壁見ゆるまで
何者と院に問はれてあけぼのとしづけく答ふ死の歌合
死にし友の賜びし陶器に顔ひとつ青もてゑがかれゐたる わ・た・く・し
紫陽花の頭をふりて人と逢ふ人たちまちに雷神となる
黒妙のたましひひとつ泛ばせてにんげんのごとく湯浴みせりけり
くちなはを庭に見たりしただひとたび女王のごときわれと思ひき
石を積むまた石を積む崩されて崩されて桔梗は星へ
テーブルに來たれる鴉、フェードルとみづから名乘り崩れゆきけり
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
第57回超空賞と第21回前川佐美雄賞をダブル受賞した、水原紫苑氏の第十歌集。
『天国泥棒』と同じく短歌日記に近い構成で、一冊の中に様々な物語が詰め込まれている。
銀木犀かたちあるもの引き継げず