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echire☆echire project 俳句の記録

銀木犀

『快樂』水原紫苑(短歌研究社2022)より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

紫のきはまるところ藤ならむ欲望の房ながく垂れ嘔吐を誘ふ

雨の日は死にたくなきに紫の賜物の傘ささば煉獄

狼が犬となるまでひさかたの銀河にくらき壁見ゆるまで

何者と院に問はれてあけぼのとしづけく答ふ死の歌合

死にし友の賜びし陶器に顔ひとつ青もてゑがかれゐたる わ・た・く・し

紫陽花の頭をふりて人と逢ふ人たちまちに雷神となる

黒妙のたましひひとつ泛ばせてにんげんのごとく湯浴みせりけり

くちなはを庭に見たりしただひとたび女王のごときわれと思ひき

石を積むまた石を積む崩されて崩されて桔梗は星へ

テーブルに來たれる鴉、フェードルとみづから名乘り崩れゆきけり

 

 

 

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第57回超空賞と第21回前川佐美雄賞をダブル受賞した、水原紫苑氏の第十歌集。

『天国泥棒』と同じく短歌日記に近い構成で、一冊の中に様々な物語が詰め込まれている。

 

 

 

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銀木犀かたちあるもの引き継げず