『天國泥棒 短歌日記2022』水原紫苑(ふらんす堂2023)より抜粋
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
わたくしは鳥かも知れず恐龍の重きからだを感ずるあした
きさらぎはものうごく月、花の木がこころたしかむるかそけきうごき
フリージアは魚の泪に活くべしとこゑのみ立てり壺の中より
硝子戸の向かふは庭と信ずるもあやふかるべし胎かも知れず
無人なるふらここひとつおのづからゆれてとまらずたれ來たるらむ
公園に遊具さまざま在ることのひみつここより天國にゆく
揚羽蝶追ふ群れのなか捕蟲網ひときは高くかかぐる死者よ
鐡砲百合たれを撃つらむ罪人とよばれしごとくふりかえり見つ
重き重きメトロのドアの把手つかみ永遠をつかむ泪あふるる
冬紅葉鈍き褐色わが庭のたましひいまだ人閒ならむ
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
ふらんす堂ホームページでの連載を纏めた一冊。連日更新にこだわった事により、全てが完璧という訳ではない。フランス滞在編からは、お気に入りをとることが出来なかった。
「天国泥棒」という言葉の意味も今回初めて知った。可愛らしい装丁でオシャレなタイトルと思っていたけれど、実は怖い、ジワジワと効いてくる遅延型の毒を含んでいる。
手の中の妄骸羽衣白木槿