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echire☆echire project 俳句の記録

炎帝

『現代詩文庫1025 立原道造詩集』立原道造(思潮社1982)より抜粋

 

 

 

 

 

 

 詩集〈暁と夕の詩〉Ⅹ 朝やけ

 

 

昨夜の眠りの よごれた死骸の上に

腰をかけてゐるのは だれ?

その深い くらい瞳から 今また

僕の汲んでゐるものは 何ですか?

 

こんなにも 牢屋めいた部屋うちを

あんなに 御堂のやうに きらめかせ はためかせ

あの音楽はどこへ行つたか

あの形象はどこへ過ぎたか

 

ああ そこには だれがゐるの?

むなしく 空しく 移る わが若さ!

僕はあなたを 待つてはをりやしない

 

それなのにぢつと それのベツトのはしに腰かけ

そこに見つめてゐるのは だれですか?

昨夜の眠りの秘密を 知つて 奪つたかのやうに

 

 

 

 

 

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大正十三年七月三十日、立原道造は東京日本橋の商家に生まれた。🥳🎉🎂

 

巻末に、中村真一郎氏の研究論文「ある文学的系譜──芥川・堀・立原」が掲載されている。

立原の詩は東京の下町言葉で書かれているのだが、言われる迄は気が付かない。作者の背景を知っているかどうかで、「詩」の読み方が変わる証左となる。良くも悪くも。

 

上掲は立原らしくない、不安を煽る珍しい波長の作品=私の大好物である。

 

 

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炎帝や震えて叫ぶ大孔雀