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echire☆echire project 俳句の記録

大暑

『山崎方代の百首』藤島秀憲(ふらんす堂2023)より抜粋

 

 

 

 

ゆくところ迄ゆく覚悟あり夜おそくけものの皮にしめりをくるる

 

まっくらな電柱のかげにどくだみの花が真白くふくらんでいる

 

夜おそく出でたる月がひっそりとしまい忘れし物を照らしおる

 

人間はかくのごとくにかなしくてあとふりむけば物落ちている

 

破れたる障子の穴をふさぎたる目玉が大きく迫って来る

 

午後六時針垂直に水甕の水の面にとどまりにけり

 

ことことと雨戸を叩く春の音鍵をはずして入れてやりたり

 

ことことと小さな地震が表からはいって裏へ抜けてゆきたり

 

どうしても思い出せないもどかしさ桃から桃の種が出てくる

 

丘の上を白いちょうちょうが何かしら手渡すために越えてゆきたり

 

 

 

 

 

ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ

 

「生き放題、死に放題の方代」と名付けられた(らしい)山崎方代。生涯に、『方代』『右左口』『こおろぎ』『迦葉』の四冊の歌集を出している。

 

「ポエムと現実に片足ずつ突っ込んでいる」と藤島氏は分析する。今回の百首も、ユーモアたっぷりで愛唱性のある歌がメインなのだが、上掲のように曖昧模糊、不可思議な謎を含む歌の方が私好みである。

 

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四辻で半身に割れる大暑かな