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echire☆echire project 俳句の記録

夏の蝶

『定本 夢野久作全集8』夢野久作(国書刊行会2022)より抜粋

 

 

 

 

〔猟奇歌〕

 

この夫人をくびり殺して

捕はれてみたし

と思ふ応接間かな

 

 

抱きしめる

 その瞬間にいつも思ふ

あの泥沼の底の白骨

 

 

水の底で

 胎児は生きて動いてゐる

  母体は魚に喰はれてゐるのに。

 

 

色の白い美しい子を

 何となくイヂメて見たさに

  仲よしになる

 

 

埋められた死骸はつひに見付からず

砂山をかし

青空をかし

 

 

ヘビの群れを生ませたならば

………なぞ思ふ

取りすましてゐる少女を見つ

 

 

殺したくも殺されぬ此の思ひ出よ

闇から闇に行く

猫の声

 

 

誰か一人

殺してみたいと思ふ時

君一人かい………

………と友達が来る

 

 

踏切にヂツと立ち止まる人間を

遠くから見てゐる

白昼の心

 

 

血のやうに黒いダリヤを

凝視して少女が

ホツとため息をする

 

 

 

 

 

ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ

 

長らく気になっていた〔猟奇歌〕が纏めて読めるという事で、国書の新刊鈍器本を借り出してきた。ありがとう図書館、ほぼ新品?多分私が初めて?他に借りる人はいなかった?と思われる。

 

生理的にギリギリ受け入れられる中から、10首選んでみた。並べて読むと、何となく創作法のようなものが見えてくる。

 

こうしたサブカル作品は、ポリコレ的にネット上に発表するのは難しいが、紙の本(同人誌)なら収録可能という現象が起こりつつある。経過観察要。

 

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弥勒の手ひそりと触るる夏の蝶