『現代短歌パスポート1/2』藤枝大編集(書肆侃侃房2023)より抜粋
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吐く息でまつげが濡れる土曜日にわずかに犬の鳴く声がする
完璧な時代 つねった頬から蝶が湧き顔が花畑になるような
三日月が心に刺さったまま生きて 三日月ごとわたしは光ってる
(初谷むい/天国紀行)
半袖のあなたの腕を這いのぼるほくろたち遠くが夜になる
壁からも顔からも穴があふれだし眠れずにいる猿の手をして
(大森静佳/オーガンジー)
上下する眠りの胸の川平湾櫂差し入れる腕を伸ばして
指と指ひろげ生まれた入り江から浸りゆく海の、浪費の、泡の
(小島なお/群か星)
展示室、ほのぐらくしてマーコールの角の螺旋は空に喰ひ込む
鳥に近しき橈骨秘めて手は舞へりときにいきものを解体しつつ
鯨骨を天井に吊りその下をゆきかふ魚の敬虔をもて
(川野芽生/恐竜の不在)
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現代短歌パスポート1/シュガーしらしら号
榊原絋 伊藤紺 千種創一 柴田葵 堂園昌彦 谷川電話 吉田恭大 菊竹胡乃美 宇都宮敦 初谷むい
現代短歌パスポート2/恐竜の不在号
岡野大嗣 大森静佳 寺井奈緒美 我妻俊樹 伊舎堂仁 安田茜 谷川由里子 北山あさひ 小島なお 川野芽生