echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

とぐろ巻く光の雫花氷

朝はまず薬缶に水を入れることから始まる。お仏壇に供えるお茶を沸かす為だ。

 

幼い頃親から教え込まれたので、どこの家でもそういうものだと思っていたが、案外珍しい作法のようだ。そもそもお仏壇が無い家もあるのだもの、何をお供えするのかは千差万別、ご家庭毎に違って当然である。我が家では毎朝の一番茶と、ご飯を炊いた時の一口目をちょこっとだけ、最早機械的に上げている。

 

 

 

両親が亡くなってから数年間悩んだのだが、本棚の上に置く小さなお仏壇を購入することにした。家を継いだ訳ではないので、本来は私が仏壇など持つべきではないが…

 

お盆前のある日、夢の中に父母が出てきた。縁側に二人並んで座る後姿を、あぁ、お気に入りの場所に居るな〜と眺めていたのだが、ふいに「どうしようか、帰る家が無いんよ…」という母の声が聞こえてきた。そのあまりの明瞭さにびっくりして目が覚め、真夜中暫く泣いてしまった。二人共貴女の所に帰りたいんじゃないの?と、姉もその夢が妙に気になるという。

 

実家の事に関しては、ちゃんとした後継者がいるのに女はでしゃばるなと言う親族もまだまだ多い。いらぬ波風を立てるつもりも無い。

…という訳で、小さな阿弥陀様をこっそりとお祀りすることにした。仏壇と言っても魂入れをしていないので単なる収納箱にすぎないが、私の気持ちの安定の為には、それ位の仮住まい感が丁度良い。お盆に帰ってくるご先祖様全員は入りきらない小サイズ、通販で二割引!のお粗末な仏壇ではあるが、帰省が困難なこのご時勢、あの時思い切って型にしておいて良かったと思う。

 

なんか小さい家やなぁ〜とボヤきながら、奥から順々と詰めてや〜と仕切る両親の姿が目に浮かぶ。ご先祖の皆々様にも、セカンドハウスとしてご利用頂けるなら幸いである。

 

 

 

蛍獲て少年の指みどりなり 山口誓子