echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

当代も捨て猫となり額の花

白い丸襟のブラウスに海老茶のプリーツスカートを着せてもらい、お姉さんになった気分で、朝から私は上機嫌だった。これまた他所行きの半ズボンを履いた弟を従えて、二人で家中を走り回っていた。

 

座敷の襖は外され、チョウダ(納戸/寝所)の和箪笥も大人数人掛かりで運び出された。本間の八畳、六畳、四畳半が二間、増築した洋間も合わせると悠に三十畳を超える大広間が、するすると魔法の様に出現した。

仏壇の前を少し開け、等間隔に座布団を並べていく。弟と二人、身体より大きな座布団を抱えてお手伝いをしようと張り切るが、途中から全部の座布団に座る競争に変わってしまった。終いに父親から「こりゃ!つばえたらいかん」と怒られ、離れに追いやられた。

 

これが私の一番古い記憶である。祖父のお葬式の時なので、私は四歳、弟は二歳、姉はもう小学校に上がっており、この記憶の中には出てこない。

 

不可解なのが、座布団を跳んだ記憶のある一方で、跳び廻っている自分を眺めている視点もあるのだ。ショートカットでたすき掛けのスカート姿の私が、こっちを向いてにんまりと満面の笑みを浮かべている。何度も思い出す過程で、場面ごと映像化されて、記憶が上書きされたのだろうか?どこまで信じて良いのか…脳の仕組みは本当に不思議、謎だらけである。

 

 

 

柚の花やゆかしき母屋の乾隅 蕪村

 

(総務から一段違う欄に印鑑押してますよと怒られ、その記憶がまったく無いことにショックを受けた今週の私…記憶とはなんぞやと言う話だよ)