風
一
遠きもの
まづ揺れて、
つぎつぎに、
日に揺れて、
揺れ来るもの、
風なりと思ふ間もなし、
我いよよ揺られはじめぬ。
ニ
風吹けば風吹くがまま、
我はただ揺られ揺られつ。
揺られつつ、その風をまた、
わがうしろ遙かにおくる。
三
吹く風に揺れそよぐもの、
目に満ちて、
翔る鳥、
ただ一羽、
孤は描けど、
揺れ揺れて、
まだ、空の中。
四
吹く風の道に、
驚きやまぬものあり、
光り、また暗みて
をりふし強く、急に強く、
光り、また暗む、
すべて秋、今は秋。
五
輝けど、
そは遠し、
尾花吹く風。
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
初出は大正12年(1923年)発刊の詩集『水墨集』、ちなみに大正12年は関東大震災の年でもある。
『邪宗門』や『思ひ出』等初期の詩集にみられた絢爛豪華さは影を消し、この時期の白秋の作風は閑寂清楚、日本的な陰翳を帯びている。
白秋には句集も一冊あり、自由律俳句がお好みだったらしい…のだが残念ながら未読。
触れるとき触れられており花薄