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「去りゆく人に」 新美南吉
お前と二人で建てた
丘の上の二人の家を
壊してしまはう
美しい台所も
心地よい居間も
陽のあたるテラスも
壊してしまはう
二人の椅子は
つぶして燃してしまはう
二人の寝台は
どこかの海に
流してしまはう
二人で植ゑた花壇は
ひつこぬいて
捨ててしまはう
二人で飼つた小鳥は
扉をあけて逃してやらう
二人の子供は
どこかの森や
どこかの街へ
旅に出してやらう
子供につけた名前は
可愛いあの名前は
拭つて忘れてしまはう
おお、みんな
お前と二人で描いてゐたすべてを
捨ててしまはう
そして最後に
二人で長い間保つて来た
二人の間の小さな灯を──
お前の掌とわたしの掌で
囲つて来たこのなつかしい一つの灯を
そつと吹きけさう
そつと吹きけしてしまはう。
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
谷悦子氏による学術的研究書。物語性についての考察は、最近のナラティブ化ブームを嘲笑うようで面白かった。
私の中で、新美南吉と八木重吉がしばしば混線していたのだが、これからは大丈夫!南吉は所謂イケメン、甘えん坊の放蕩息子で、長生きしてもロクなことがなかった可能性が高い。そして放蕩の結果、数多くの海外文学に触れ、それが下敷きになってあの傑作童話たちが生まれたのである。
上記のような大人向けの詩もいくつか紹介されており、人物像を知ってから読むとより理解が深まる。Wikipediaにも載るといいのに。