『不死身のつもりの流れ星』最果タヒ(PARCO出版2023)より抜粋
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美しく美しくと泣いている骨でも肉でもないぼくの湖
薔薇をのぞきこむときと、
ホテルの部屋に初めて入るときは、すこし似ていて、
ぼくはしばらくのあいだだけ、
ここに身を預けるのだと、ふと気づく。
すとんと床に荷物が置かれたような、
なにかが軽くなる感覚。なにかを、忘れていく感覚。
さみしさよりももっと、安心に似た心細さに、
名前をつけなかった人類を、ぼくはたぶんずっと愛している。
ホテルの詩
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
最果タヒ氏の第10詩集。
2020-2022 年、各地で行われた最果タヒ展の発表作品を収録。
「ホテルの詩」は比較的解りやすく、心細さに…までなら、私にも書けそうな気がする。が、最後の一行に最果氏らしい急展開が起こり、場面が飛躍する。何故この言葉が続くのか、何故ここで終わるのか、結局何が言いたいのか…煙に巻かれ、違和感だけが残る。それは「詩」である為のテクニックなのかもしれない。意味を問うことを拒絶する、作者の意図が見え隠れしている。
処理水の暗渠夢をみる海月