秋深しマダムはゆったり歩くもの
みな死ねと森のドングリ踏めば悪
黄落や褪せた詩集の音となる
秋立ちて足の鋭き爪隠す
全盛期ならば殺してゴーヤ棚
生前にわかり合えない桔梗咲く
帰る人濡縁に立つ夏の終
蟷螂の渡る沓脱石の縞
寝返れば遠のく気配蘇鉄の葉
秋明菊行きつ戻りつ我が領土
午後/佐川ちか1934
花びらの如く降る。
重い重量にうたれて昆蟲は木蔭をおりる。
檣壁に集まるもの、微風のうしろ、日射が波が響をころす。
骨骼が白い花をのせる。
思念に遮られて魚が断崖をのぼる。