ファーブルの帽子暗坂虫の声
葛の葉や帽子の裏の頭文字
しゃがみ込む人影蒼く酔芙蓉
鶏頭咲く小さな駅舎瓦屋根
塔、館、城塞越えて秋彼岸
天高し誰も凭れていない窓
嚔して人へと戻る刈田かな
金木犀歪んだ列の最後尾
琴柱窓ひそりと開く草の花
黒髪を広げて睡る木の実雨
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ
両手をあげて、夏へ 小島なお/女性とジェンダーと短歌(短歌研究社2022)より抜粋
尾の代わりの両手を垂らし生きている時間をそっと床に逃がせり
生んでいない子を思うこと増えながらあかるいパンジー大きなくらやみ
膝を抱く裸の身体ひとつぶん梅雨のシンクはまぼろしを容る
かなしみがコンビニをつよく光らせる 手すりづたいに感情をゆく
風見鶏 兵士には背中がないと日傘のなかで教えてもらう