遺句集『風のかたみ』多田智満子/高橋睦郎編(書肆山田2004)より抜粋
身の内に死はやはらかき冬の疣
薄日さす白き草の府草の王
春寒くのみどにうごく佛かな
滿開の椿ごもりや隱れ鬼
甕埋めむ陽炎くらき土の中
道は道に迷ひて春の道祖神
舞へや舞へ片目つむりて蝸牛
鳥誘ふ骨といふ骨みな鳴らし
身を屈め椎を拾ふは地を拝む
草の背を乘り繼ぐ風の行方かな
多田智満子詩集『封を切ると』付録の遺句集。
病床で書き止めたメモより157句が収録されている。直接面識のあった人にだけ本意が届けば良かったのか、一句毎の完成度はマチマチである。
全体を通して読むと、どことなく永田耕衣の句柄に似ている。
宗教感が近いのか?二人とも神戸在住で同じ景色を眺めていたからか?
(私の勝手な思い込みに過ぎないのかも知れない。)
我が影は覆い尽くせず四葩咲く