『その瞬間 創作の現場ひらめきの時』黛まどか(角川学芸出版2010)より抜粋
さくらさくらもらふとすればのどぼとけ
見送って沈丁の闇残りけり
水中花水が疲れてゐたりけり
七夕の空を映して忘れ潮
ひとつ灯に父母のゐる稲の花
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自選自解100句。14年前、2008〜2009年に配信されたメールマガジンを底本とする。
黛氏の場合、華やかな経歴、広告塔としての活動が先に目につくので、実作に対してはどうしても評価が厳しくなってしまう。
今回の100句は普通と言えば普通、堅実で破綻が無く、お上手なのだが面白味には欠ける。
基本的にまず実景があり、そこからの飛躍→季語との取り合わせ、のバリエーション展開である。(本書に限らず自選自解本はだいたいこのパターン)
あとがきには…
“ 誰もが同じような場面を経験していて、「確かにこんな風景を見たことがあった!こんな風に感じたことがあった!」と、読者に膝を打たせなくてはいけない。”
…とある。
確かに俳句にはそういった一面もあるが、全てに当て嵌まる訳では無い。あくまでも初心者向け、句会参加者向けのアドバイスとして発信されたのだと推察する。
聞き取れぬままに頷く薄暑光