『現代女性詩人論』中村稔(青土社2021)より抜粋
闇 多田智満子
まっくらな夜空に
薔薇が充満している
幾万もの薔薇がうごめいている
わたしにはそれがわかる
うなじに落ちるこの重い夜露が
ひしめきあう薔薇の汗だということが
石垣りん、茨木のり子、多田智満子、白石かずこ、新川和江、吉原幸子、高橋順子、井坂洋子、小池昌代、伊藤比呂美、以上10人の詩人に対する論評集。各々代表作が紹介されているので、現代詩の入門書としても得難い一冊となっている。
面白いと思ったのは、引用された詩に対して、これは良い、これは失敗、とはっきり断言されている点だ。
† 例えば石垣りんの場合、
「原子童話」「私の前にあるお鍋とお釜と燃える火と」「貧乏」「シジミ」「表札」「花」「貧しい町」→○
「愚息の国」→×
「崖」→△
なるほど〜と納得する部分と、いや違うんじゃない?と首を傾げる部分、当然ながら混在する。男性目線で読むとそうなるのだろうな、とある程度は理解できるのだが…『詩』の解釈は人によりここまで異なるのだと改めて感じた次第である。
夢にまた生まれてしまう夏の蝶