『銀河一族』小佐野彈(短歌研究社2021)より抜粋
どの嘘もやさしい声で語られてゆけばほころぶさくらのやうに
ふくよかな頬にみやびをくすませて老いと気づかぬまま老いてゆく
冷笑があまねく街にひろがつて無声映画のやうな夕方
第一歌集『メタリック』から3年半、今回も私性系の極みと言って良いだろう。ロッキード疑獄、両親の離婚、オープンリーゲイ…出自の負の部分を包み隠さず歌っている。
自分語りをする為のツールとして、短歌は程よい長さと型がある。作中主体=作者、≒作者どちらも容認されており、文学たり得るかどうかは、逆に書かれていない部分(何を書かないか)によって判断される。
思いの丈を一通り書き終えると、案外あっさりと短歌から離れてしまう人も多い。小佐野氏はどちらだろうか。
*私性系とは↓私はF韻律系???
https://qai17310.livedoor.blog/archives/8904981.html
花に来て手繰れば銀の栞紐