『神様の住所』九螺ささら(朝日出版社2018)より抜粋
きよらかな思考を持ちし牛を食みゆっくり人を愛し始める
〈体積がこの世と等しいものが神〉夢の中の本のあとがき
雛雌雄分けしてるようきみの指わたしをふかくよく見つけてる
頭蓋骨二つ並んでその中に分断された同じ夢二つ
境内で鬼ごっこする鬼の手が後ろからわたしに目隠しする
マフラーを編んでいる人は黙黙とこの世の端を編みつづけてる
香具師の売る「野原の種」を購ひて寝たきりの姉の夢の中に蒔く
電柱に「白河夜船製造所夜間工員募集」の貼り紙
その中で悪魔が髪を洗いつつハミングしているような一秒
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冒頭と最後に短歌、間に散文(解説)という構成。
散文と言っても、詩のように文章に流れがあり、時に哲学的、トリビア満載、84編全部の話が面白かった。
短歌だけを読むと、作者の抱えている生き辛さ、書かずにはいられなかった切羽詰まった心境が、通奏低音のようにじわりと迫ってくる。
二重に印象が残る摩訶不思議な一冊。
菜の花へすいと踏み込む星明かり