echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

鳥雲に

 

 

 

ハスキーな声でオーダーを繰り返す

彼女を包むボサノバ

厨房の喧騒

一人優雅に踊っている

美しい残像

 

パフェの試作は楽しいし

春のメニューならば尚更

わざと失敗して何度も試食するの

 

バックヤードで交わすたわいもない会話

スマホの操作を教わりながら

のど飴の味比べ

 

 

 

 

 

理不尽な事故の知らせは唐突で、書かれたメモの文字を理解できない。ざわつく胸を宥めながら、まだ泣いては駄目と繰り返す。命に別状は無いという言葉の無力さ…ただもどかしく…私達には祈ることしか許されなかった。

 

 

 

そして未だ彼女は深い眠りの中

 

 

 

願わくば

どうか楽しい夢をみていますように

 

長い髪を風になびかせながら海辺を歩く

美味い酒を片手に振る舞う料理

タンバリンならおまかせ

息子達とその彼女 老猫

 

 

 

貴女と話したいことが沢山あるのに

取り残された私達には成す術がない

 

 

 

地下街ですれ違う幽霊

橋の上から飛び降り続ける人の影

 

遠く国境の街で泣く子供

 

 

 

 

 

 

 

 

春2022

鳥雲に小鬼と棲まう戻橋