『セレクション俳人15/中原道夫集』中原道夫(邑書林2008)より抜粋
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辻斬りのあと凍蝶の落ちてゐし
金屏の裏に孵りてまだ飛ばず
船底に黄泉の付きくるおぼろかな
おぼろなり貝の足にてふるるもの
肌脱の裏庭に飼ふ禽けもの
蝉しぐれ褪せ放題の緋の幟
一枚の舌のいはせる花の冷え
襖繪の流れは裏に來て落つる
車座の夜は立ち直るげんげかな
秋蚊帳を誰も出て來ぬあしたかな
前半は俳句800句(1997年〜2002年)、後半に散文7本、銀化同人10名による中原道夫論の読み応えある構成。
これだけの量を纏めて読むと、中原氏の個性、独特の世界観が際立つ。
イメージとしては、俳句というよりも映画とかドラマのプロットを書き出している感じに近い。若干時代劇調(夢枕獏とか?)ではあるが、そこは敢えて狙っているのかも知れない。
春深く落ちればいいが水の夢