2022-05-01 ⑧夏【2020/やがて地獄へ下るとき】 五月雨や渡り廊下に朽木の香 空き席へ鳥の声降る青嵐 木下闇顔なき人の背の高さ ゆらゆらとうろくず集う夏野かな 夕焼を呑む恐竜うすむらさき 藪蚊来て夜更けの水に誘わるる 水妖の登るきざはし半夏生 夏痩せの少女うたたね消え易し 松葉牡丹赤くひろがる原爆忌 珊瑚樹の森へと迷い夏の果 『白い晝』藤木清子 ひとりゐて刃物のごとき昼とおもふ 昼寝ざめ戦争厳と聳えたり 戦死せり三十二枚の歯をそろへ