echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

瞬きの後の世にあり寒椿

先日、一年半ぶりにデザイナー時代の大先輩(74)と遊びに行ってきた。奮発したという電動自転車で颯爽と現れ、ヘアスタイルもネイルもばっちり。相変わらずのお洒落さんで、遠くからでもキラキラオーラが出ているのがわかる。しまった!と思ったがもう遅い。寝癖のまま来たね〜と笑われてしまった。

 

非常事態宣言中は、家族から外出禁止令が出て、病院とスーパー以外何処にも行かなかったとか…真面目やなぁ…でもご家族の心配も解らないでもない。

仕事を勇退した後、さあこれから趣味の旅行三昧という時に、パーキンソン病を発症してしまったのだ。発見が早かったこと、投薬治療が上手くいったこともあり、進行は緩やかで、四年経った今でも在宅で日常生活を送ることができている。

 

前回会った時には、文字を書いたり湯呑みを握ったり、握力が必要な手仕事ができなくなっていた。最近は足先の痺れが進み、坂道や長い距離を歩くことが難しくなってきたそうだ。近い将来を見据えて療養施設の見学にも行ってきたと言う。個室だけどトイレは共同なのよ。でもどっちみちオムツになるし…だよね。

 

こんなにも深刻な話を、明るく口に出せるようになる迄には色々な葛藤があったに違いない。いつまで経っても行き当たりばったり、ふわふわ頼りない後輩に、こうやって終活するのよ!とお手本を残そうとしてくれている。覚悟というか、矜持というか、彼女なりの美学…私は相も変わらず魅せられてしまう。

緊急事態宣言下、なんでも話せる友達は二人しかいなかった。その数少ない友達のうちの一人が彼女なのである。

 

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枯野光わが往く先をわれ歩く 中村苑子