エシレバターのエシレ(echire)をハンドルネームに使っているが、エシレバターが格段好きと言うわけではない。梅阪の地下に売場ができるまで実際に目にする事は無かった幻の存在、高級食材エシレバター。
何故この言葉を選んだのか言うと「穂村弘」である。
何気なく読んでいた彼のエッセイの中に、すれ違い際女の人が「エシレ」と呟いたという話があった。その時に彼が下げていた手提げ袋の文字を、咄嗟に口にしただけのことで、もしかしたら無意識だったのかも…てな感じで、穂村氏らしい軽妙な小話だった。
…と、ここまで書いて本当にこんな話だったっけ?と不安になって本棚を漁る。結構何冊もあるんだわ穂村弘…2冊目でヒット!「蚊がいる」の中に確かに収録されていた。心の中身が勝手に口から出てしまう感じについての考察で、展開もオチも秀逸。やっぱり面白い!
疲れ切って、いっぱいいっぱいになって、言葉が溢れてくる。最初に俳句を作っていた時の私はまさにそんな状況だった。「エシレ」と呟いた女性は私に違いない。エシレは私、私はエシレ…と繋がった次第である。
自分で文章を書くようになってからは、穂村氏のエッセイも読み方が変わってきた。何処までが事実で、何処からが創作なのか気になってしまう。エシレバターの紙袋を下げた穂村弘はいたのかいなかったのか…全てが想像としたら恐ろし過ぎるが、彼ならあり得る気もする…怖い怖い。
絹よりうすくみどりごねむりみどりごのかたへに暗き窓あきてをり
葛原妙子