echireeeee

echire☆echire project 俳句の記録

片隅に闇が生まれる雛飾

阪神大震災の後、芦屋の邸宅で古いお雛様を見せて頂いたことがある。気品のあるお顔立ち、見るからに古風なお衣装、少々傷がついたので修繕に出すというお話だった。成る程本当のお金持ちとはこういう品を好まれるのかと大変勉強になった。

 

我家のお雛様は、初孫の長姉の為に大阪から取り寄せたという御殿飾りの大きな物で、中学生の頃迄は毎年飾っていた。組み立てると幅一間を超え、座敷はしばらく人形専用となる。ニクイロさんと呼ぶ大きな市松人形も何体かあり、母や叔母に手縫いの衣装を拵えて貰っていた。御殿もお人形も子供達に容赦なく扱われ傷だらけになっていたが、修理に出すなどという発想は家族の誰一人持っていなかった。生活レベルの差はこういう所に現れると思った次第である。

 

お雛様の持ち主である姉は、三歳の誕生日を迎える前に亡くなっている。生まれつき心臓が弱く、お人形さんの様に色白で綺麗な子だったという。その後生まれた次姉も私(参女)も、お雛様を譲り受けることはできなかった。不吉な品ということで、お雛様は家に憑く物になってしまったのである。

 

 

 

 

 

雛壇のうしろの闇を覗きけり 神生彩史

 

 

自己紹介としての挨拶句

2014年から俳句を作り始め、ほぼ全部をnoteで公開してきました。例外として2019年の秋からTwitter用の挨拶句を幾つか作っています。

 

 

魔法使いの弟子の日常ゐのこづち

童子童子童子つづきて雪女

*人間はもう帰らない鐘朧

*金魚売りきりぎし御覧なすったか

*毒菌生ず無形の箱の蓋

*是はこれ難をのがるる氷面鏡

 

 

一応有季定型なので私は俳句と見なしていますが、句会や投稿ではまず却下される意味不明の駄句…それを解っていながら何故これらを自己紹介の挨拶句として載せているのか…うまく説明できるでしょうかね???

 

 

組織の一員として仕事をしていると、担当者が変わっても同じレベルのサービスが提供できること、自分の好みよりもお客様のご希望を優先すること、更にお客様が考えているよりも少しだけ先の提案ができること、等が要求されます。

稀に、ごく少数ですが、あなたに頼めばどういった物ができるの?と問われる方がいらっしゃいます。この時、お好みに合わせて何でもできますという答えはまず駄目で、私はこういうのが好きです!とはっきり提示する必要があります。それで終わるならそれまでの仕事と割り切る覚悟がないと、この手の人とは上手くいきません。

 

このあたりの心の動きが、上掲の挨拶句を作る遠因にあるのかなと思います。解りにくいか…書いてる本人もそこまで深くは考えてないので、この話はここで終わりにしましょう笑。

 

 

 

七年の七人岬蕗の薹

 

 

こちらが2021年春の挨拶句です。

子供の頃、ご近所の門前に小さな砂場があり、毎年春になると蕗の薹が芽吹いていました。通りすがりの人達が微笑みながら大事に見守る、そんな癒しのスポットでした。

ところがある年、その家のご主人が釣りに出たまま帰ってこない事件がおこりました。事故とも自殺とも判明せず…やがて七年。蕗の薹の家は今でも昔のままですが、皆の心から痛ましい記憶が消えることはありません。

四国では海の難所を七人岬と呼ぶことがあります。勿論正式な名称ではなく言い伝えの部類です。もしかしたらご主人は亡霊となって岬に佇んでいるのかもしれない。足元には蕗の薹が芽吹いている。早く帰っておいでよ…

 

…こんな妄想を日々しています。

どこからが妄想なのか解りましたか?事件は本当に起こったのか、蕗の薹の家は実在するのか、はたまた全てが妄想なのか…怖い怖い。

 

 

 

みたいな感じで、週末に少しずつ更新していきますので、宜しければお付き合い下さいね。

ではまた!